俺たちに明日はある

第ニ話
(全十一話)

〜別れ〜


竜崎「あんた・・・何で俺を助けたんや。」
竜崎は一言、五十嵐に尋ねた。
五十嵐「んなもん。ボコボコになってたからだよ。なぁ、風呂借りていいか?」
竜崎「あ・・あぁ。入っていいよ。」 五十嵐はニコッと笑い、風呂場に駈けて行った。
竜崎は無言のまま窓の外を見つめた。時は夕方。日が沈みかけていた。

五十嵐が風呂から出てきた。勝手に竜崎のパンツをはいていた。
五十嵐「くはぁ!気持ちよかったぁ!サンキュな!パンツも借りてるから♪」
五十嵐はそう言って自分の家かのように冷蔵庫を開ける。
五十嵐「ったくビールはねぇのかよ!」
竜崎「当たり前や!!俺はまだ未成年やぞ!・・・」
竜崎の大声が部屋中に響く。五十嵐は笑いながら牛乳を取り出した。
戸棚からコップを取り、それに牛乳をそそぐと、すぐその冷たい牛乳を飲んだ。
五十嵐「うんめー!牛乳もいいな。体にいいしな。・・・あ、そう言えば、竜崎!おめぇ明日、卒業式じゃ?」
竜崎は布団からころげ落ちた。そうだ!明日は卒業式だ。
竜崎「そや!明日、卒業式や・・ボコボコにされたから忘れとったわ。うっわ・・こんな顔で行くんか?」
竜崎はボコボコにされた顔を鏡で見ながら叫ぶ。五十嵐は笑っている。
五十嵐「しゃぁねぇよなぁ。・・・・んでさ、お前大学行くの?何すんの?卒業したら。」
五十嵐の質問に、竜崎はうつむいたまま答えない。
五十嵐「・・・何だ?まさか就職先無いの??大学も行かねぇ・・お前!俺と同じプー太郎かよ!」
そう言ってゲラゲラ笑う五十嵐にだんだん腹が立ってくる竜崎。遂に我慢の限界が来た。
竜崎「うっさいわ!!お前には関係無いやろ!!しかも何勝手に人ん家入っとんねん!出ろ!出ろ!」
そう言って竜崎はパンツ一丁の五十嵐の背中をドンドン押した。
五十嵐「何すんだよ!!ボコボコにされてんの助けたのは誰だよ!!お前死んでたかもしんねーぞ?」
竜崎「あぁん?勝手に助けたんはお前やろ?俺は助けてなんか一言も言ってへんぞ!
    それとな、家入れるって約束は昨日だけやぞ!今すぐ出てけ!!」
竜崎は半ばキレ気味の表情で五十嵐をドアーまで連れて行く。
五十嵐「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん!わかったよ!お願いします。いさせて下さい!」
竜崎は少し止まって、ちょっと考えた後、再度五十嵐を押した。
竜崎「やっぱ無理!何か恩きせがましいし。」
五十嵐「おーい!謝ったじゃねぇか!せこいぞお前!」

ーーー結局、かなりしつこい五十嵐の為、今日だけ泊める事にした竜崎。ーーー
竜崎「ホンっマに今日だけやからな!ったく・・自分でマンションくらい借りろよな。なっさけねぇなぁ。」
五十嵐「うっせーよ!!・・どうせお前、親の仕送りでここの家賃払ってるんだろ?」
と、竜崎の表情が変わった。五十嵐を睨みつけ・・重い口を開ける。
竜崎「バイトしとんねん。ここの近くの喫茶店でな。親の力なんか借りずに生きれるわ。」
と、その言葉を聞き、五十嵐も表情が変わる。
五十嵐「バイト・・お、おい!俺もそこでバイトさせてくれ!お前から店長に頼んでくれ!」
五十嵐は竜崎にしがみついて何度もお願いした。
竜崎「んー。確かに俺はそのサ店の店長と結構話合うから仲はええしなぁ〜。俺の頼みやったら、
    一人くらいなら雇ってくれるかもな〜〜。」
そう言って竜崎は上から五十嵐を見つめた。
五十嵐「ははは。頼むよ!竜崎。いや・・竜崎さん!今日もかっこいいっすね。」
竜崎「無駄なお世辞はせんでええよ。・・まぁ、助けてくれたし。わかった。明日バイトやから一緒について来い!」
五十嵐「わっかりました〜〜〜!!」

次の日、竜崎は卒業式を終え、自分の家へ戻ってきた。
ドアーの横の壁に、五十嵐がもたれていた。
五十嵐「ったくよ!!家に入れさしといてくれよ!遅いよ!!」
竜崎「しゃぁないやろ。泥棒されたらかなんしな!留守番頼む程俺は優しないしな。」
ガチャガチャ・・竜崎は鍵を開け。部屋に入って急いで私服に着替える。
竜崎「待たせたな〜!よっしゃ!行こうか!」 数分後、竜崎は私服で部屋から出てきた。
鍵をかけて、五十嵐と共にマンションの階段を下りる。
五十嵐「本当に大丈夫なんだな?頼むぞ!」
竜崎「わかってるわ。しつこいな〜!でも嫌やなー・・同じ職場で働かなあかんなんて・・」
二人ははたから見れば仲良しの二人組のような雰囲気で喫茶店へ向かった。
五十嵐「なぁ、その喫茶店ってどんな店なんだ?」 五十嵐がふいに竜崎に質問した。
竜崎「んー、どんな店ねぇ・・何か雰囲気ええ店やで。店長もあんたと同じくらいの年齢やし。」
五十嵐「へー・・何か楽しみだなぁ・・」 竜崎の返答に五十嵐は満足したようだ。
歩く事、10分、喫茶店に着いたようだ。店の前で竜崎は五十嵐に言った。
竜崎「じゃ、俺が五十嵐のこと話してくるから。待っとけよ!」
そう言うと、竜崎は走って店の中へ入っていった。

竜崎「ども!」 竜崎は大きな声で挨拶すると、真っ先に店長のところへ行った。
と、店長らしき若い男があちらから歩いてきた。店長は黒髪のロングヘアーで名前は
倉木(26)といった。
倉木「おうおう。竜崎か。今日は確か卒業式やったらしいなぁ!」
店長の倉木はニコニコしながら竜崎の背中を叩いた。
竜崎「ははは、おかげさまで卒業しましたわ。」 竜崎もニコニコしている。
倉木「今日からはお前も正社員として働いてもらうからな!・・開店してるけど、ま、いっか。客足も少ないし。呑むか?」
倉木はそう言って冷蔵庫の中から一本のビールを取り出した。
竜崎「いいですねぇ。・・あ、そうや!あの、俺の友達・・友達?かな・・あの雇って欲しい人がいるんすけど!いいっすかね?」
倉木はニコッと笑って返す。
倉木「おー、ええよええよ。従業員少なくて困っとってん。で・・今おんの?」
竜崎「あ、います。連れてきますわ。有難うございます!今、連れてきますわ。」

タタタタタッ。 店の自動ドアーを経て、竜崎は待っている五十嵐の下へ向かった。
竜崎「おいっ、五十嵐!採用やて!店長が連れてこいって言うとるから!ほらほら!」
五十嵐「マジか?・・やったぁ!サンキュ!」 五十嵐は竜崎に連れられて店へと向かう。
二人で走って店の自動ドアーが開くとともに喫茶店内にすべり込んだ。
竜崎「あ、店長!こいつっす!雇って欲しいって奴!」
竜崎は笑いながら五十嵐の頭を叩いた。
しかし、店長の顔がおかしい。少しひきつってるかのようにも見えた。
一瞬時が止まったのかのようにも思えた。
竜崎「ん?店長・・?どうしたんすか?」
その瞬間、五十嵐が店長目掛けて走り出した。
何がなんだか分からなかった。竜崎の目には五十嵐が店長を殴るという光景が見えた。
竜崎は我に帰り、五十嵐を止めに入る。走って二人の下へ向かう。
五十嵐はキレていた。倉木の胸倉をつかみ、腹にひざ蹴りをくらわした。
竜崎「何しとんねん!!やめぇぇ!!」 竜崎は五十嵐と倉木の間に入り、大声をあげた。
店内の雰囲気が一瞬にして変わった。他の店員が遠くからこちらを見ている。
竜崎「お前、自分が何したかわかっとんか!!」 竜崎は五十嵐の胸倉をつかんだ。
五十嵐はペッと店内につばを吐いて答えた。
五十嵐「前言っただろ・・刑事首になった話。・・ミスを犯した刑事ってのはコイツだよ。」
五十嵐はそう言って倒れている倉木を睨みつけた。
竜崎「・・・・」 竜崎は目を大きくして驚いた。ゆっくり胸倉から手を離す。
竜崎「店長。大丈夫っすか?」 竜崎は反対側にまわり、倒れた倉木に声をかける。
と、倉木は竜崎と五十嵐を睨みつけた。
倉木「誰連れてきとんねん・・竜崎、お前なんかクビじゃぁ!!出て行け!!」
倉木は店内中に響く大声で叫んだ後、竜崎を蹴って追い返す。
竜崎は黙ったまま、五十嵐の肩をつかんで店を出た。

竜崎は五十嵐の首ねっこをつかみ、誰もいない所へと向かう。
少し歩いた後、二人は無人の河原で足を止めた。
竜崎は五十嵐を地面に叩きつけて叫ぶ。
竜崎「お前何しとんねん・・お前のせいで俺もクビや・・何してくれとんじゃぁぁ!!」
五十嵐は自分の体をパンパン叩いてゆっくり立ち上がる。
五十嵐「そりゃぁ、すいませんでしたねぇ・・」
バゴォッ! そう言って竜崎の顔面をおもいきり殴る。
竜崎は砂利だらけの地面に叩きつけられる。
五十嵐「俺はあいつのせいで刑事クビになってんだよ・・殴れてせいせいしたよ。会わしてくれて有難うよ。」
そう言って五十嵐は倒れた竜崎の背中を見つめる。
竜崎はゆっくりと立ち上がり。五十嵐の顔面に殴りかかる。
ブンッ! シャッ! パンチは間一髪よけられた。
五十嵐「大振りだな。」 ボグッ!! 五十嵐はそう言って竜崎のみぞおちにアッパーをくらわした。
竜崎「ぐはっ・・・」 竜崎は腹を押さえてよろけている。
五十嵐「お前には悪いが、俺はまた新しいバイト探すわ。じゃあな。」
そう言って帰ろうとする五十嵐の背中に向かって、竜崎は蹴りをいれようとする。
シャッ! そのキックまでもが避けられた。五十嵐は笑っている。
五十嵐「ははは。高校生が俺に勝てる訳ねぇーんだよ。」
ボグッ! その時、竜崎の拳は五十嵐のみぞおちに入っていた。
五十嵐「え・・」 五十嵐は先ほどの竜崎のように、腹を押さえてよろけた。
竜崎「なめとんちゃうぞコラァァ!!」 バキッ!バキッ!バキッ! 竜崎は何度も五十嵐の顔面を殴った。
五十嵐も反撃のパンチを竜崎の顔面に何発も入れた。
二人は長い間殴りつづけた。時は経ち、先に倒れたのは竜崎だった。
竜崎が倒れたと同時に五十嵐も一緒に倒れた。
二人は空を見上げていた。まだ時間は午後になったばかりで晴天だった。
五十嵐「はぁ・・はぁ・・お前の顔なんて二度と見たくねぇよ。早くどっか行けよ!!」
竜崎「はぁ・・はぁ・・それはこっちの台詞や!お前がどっか行け近くにお前がいるなんて思うと吐き気がするわ!」
二人の言い合いは何分も続いた。遂に五十嵐が立った。
五十嵐「ふぅ・・もう俺の目の前に顔出すんじゃねぇぞ。このクソガキがよぉ!」
そう言うと五十嵐はふらふらした足取りで河原から出て行く。
竜崎「こっちの台詞じゃ!お前なんかどっかでのたれ死んでしまえ!!」
竜崎は五十嵐の背中を目掛け、大声で叫んだ。

続く


この物語はフィクションで出てくる人物等は架空のものです。


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